2027年新型タントはどう変わる?8年待ったフルモデルチェンジ、元祖の逆襲はあるか

2027年、ダイハツ「タント」がフルモデルチェンジする――。自動車メディアを中心に、そんな予想が現実味を帯びてきた。

ただし、2026年8月時点でダイハツから「2027年に新型タントを発売する」という正式発表はない。発売時期も、新型のデザインも、搭載されるパワートレーンも確定情報ではない。

それでも次期タントが注目されるのには理由がある。現行型は2019年登場。仮に2027年に全面刷新されれば、実に約8年ぶりとなる。

しかも、その8年間にはダイハツの認証不正問題があり、長くモデルチェンジしなかったムーヴの復活があり、さらに次世代軽自動車「K-VISION」の登場まであった。

ダイハツはタントを放置していたのか。それとも、次の一手を溜めていたのか。

タントの歴史から見ると、次期型に求められているものは、単なる顔の変更では済みそうにない。

タントの前にいた「ご先祖」はムーヴだった

タントそのものが誕生したのは2003年。それ以前に「先代タント」という車種が存在したわけではない。

しかしダイハツの軽自動車をさかのぼると、タントにつながる重要な存在がある。1995年登場のムーヴだ。

それまで軽乗用車といえばミラなどの背が低いモデルが中心だった。そこへ背の高いワゴン型軽自動車という考え方が広がり、ダイハツもムーヴを投入する。

小さいボディなのに、頭上は高い。人も荷物も載せやすい。

この「軽規格の中で空間を最大化する」という考え方を、さらに極端なところまで押し進めたのがタントだったと考えると分かりやすい。

2003年、初代タントは「軽の中に部屋を作った」

2003年11月、初代タントが登場した。

最大の特徴は、とにかく背が高く、室内が広かったことだ。当時としては長いホイールベースと広大な室内空間を実現し、ダイハツ自身もタントによって「スーパーハイト系」という新ジャンルを開拓したとしている。

現在ではN-BOX、スペーシア、ルークスなど、背の高いスライドドア軽は珍しくない。

しかし2003年当時は違った。

タントが示したのは、「軽自動車は小さい乗用車である必要はない」という発想だった。限られた全長と全幅を変えられないなら、上方向へ広げればいい。

軽自動車を“小さなクルマ”ではなく、“動く小部屋”に変えた。

この発想こそ、タント最大の功績だろう。

2代目で生まれた「ミラクルオープンドア」

2007年の2代目では、タントを象徴する仕掛けが追加される。

ミラクルオープンドアだ。

助手席側のセンターピラーをドア側へ組み込み、助手席ドアと後席スライドドアを開けば、中央に柱のない巨大な開口部が現れる。

これは見た目だけの飛び道具ではなかった。

子どもをチャイルドシートへ乗せる。ベビーカーを積む。高齢者の乗り降りを手伝う。狭い駐車場で荷物を出し入れする。

日常生活で「ここに柱がなければ便利なのに」という場所から、本当に柱を消してしまった。

以後、2013年の3代目、2019年の4代目にもその思想は受け継がれている。

タントとは、単に背の高い軽ではない。他社が思いつかなかった使い方を形にすることで存在感を作ってきた車なのである。

ところが元祖は、いつの間にか追われる側から追う側へ

問題はここからだ。

タントが開拓したスーパーハイト系軽自動車は、その後メーカー各社の主戦場になった。

ホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、日産ルークスなど強力なライバルが登場し、現在では「背が高く、後席スライドドアで、室内が広い」だけでは特別な商品にならない。

皮肉な話である。

タントが発明した便利さが、軽自動車の常識になってしまった。

市場を作ったことと、その市場で永遠に一番でいられることは別問題なのだ。

2019年型はダイハツにとって重要なクルマだった

現行4代目タントが発売されたのは2019年7月。

このモデルは単なる4代目ではない。ダイハツの新世代車両開発思想「DNGA」の第1弾モデルだった。

プラットフォームからパワートレーンまで刷新し、ミラクルオープンドアも継続。運転席の大幅なロングスライドなどを組み合わせ、車内での移動のしやすさも進化した。

2022年にはアウトドア色を強めた「タント ファンクロス」も追加された。

商品改良は続いていたので、「8年間何もしていない」という意味ではない。

しかし基本となる世代は、今も2019年型である。

仮に2027年まで続けば約8年間。同じタントでも初代から2代目までは約4年、2代目から3代目、3代目から4代目はそれぞれ約6年だった。

今回は確かに長い。

そこへ直撃した認証不正問題

さらにダイハツには大きな問題が起きた。

2023年に表面化した認証不正問題である。

ダイハツは国内全工場の稼働を一時停止する事態となり、タントについても出荷停止となった。その後、国土交通省による確認を経て、2024年3月にタントの出荷停止指示は解除されている。

ここで注意したいのは、認証不正問題によって「次期タントが○年間延期された」と断定できる資料はないことだ。

ただしメーカー全体が新車を景気よく連発できる状況ではなかったのも事実である。

ユーザー側から見れば、現行タントが長く続いている時期と、ダイハツが大きく立て直しを迫られた時期が重なった。

結果として「次のタントはまだなのか」という時間だけが長くなった。

2025年、先にムーヴが帰ってきた

その空気が変わったのが2025年だった。

ダイハツはムーヴを約11年ぶりにフルモデルチェンジ。7代目となった新型ムーヴには、ついにスライドドアが採用された。

発売後約1か月で約3万台を受注し、月販目標6000台の約5倍という好調なスタートを切っている。

長期間モデルチェンジされなかったムーヴが動いた。

当然、次に浮かんでくるのがタントだ。

「ムーヴまで新しくなった。ではダイハツの本命であるタントはいつ動く?」

そう考えるユーザーが増えても不思議ではない。

そして「K-VISION」が現れた

さらに期待を一気に高めたのが、JAPAN MOBILITY SHOW 2025で公開された「K-VISION」である。

K-VISIONは次世代DNGAプラットフォームを使った軽自動車の参考出品車で、新開発の軽自動車用「e-SMART HYBRID」を搭載している。

ここは「EV」と混同しやすい。

走行するのは100%モーターだが、バッテリーだけで走るBEVではない。搭載したガソリンエンジンで発電し、その電力でモーターを回すシリーズ式ハイブリッドだ。

充電設備を探す必要はなく、それでいてモーター駆動の静かさや力強さを得られる。

ダイハツによれば、従来のエンジン+CVTと比較して燃費性能を20%以上向上させる想定で、外部給電機能まで備える。

そしてK-VISIONは広い室内と両側スライドドアを持つ。

当然ながら、これを見れば「次期タントではないのか」と考えたくなる。

ただし、ダイハツはK-VISIONを次期タントだとは一度も発表していない。

現時点では、次世代軽自動車の技術を示したコンセプトであり、次期タントへの搭載はあくまで予想である。

※画像はAIによる次期タントの予想イメージです。実車・公式発表画像ではありません。

8年間は「放置」だったのか

では、2019年から続く長いモデルライフをどう評価するべきか。

辛口に言えば、ユーザーから見れば「元祖なのに新鮮味を失っていた期間」だったとも言える。

ライバルは進化し続け、スライドドアも広い室内も安全装備も、今では珍しくない。

ミラクルオープンドアという強烈な個性は残っているものの、「タントでなければならない理由」は初代登場時ほど分かりやすくなくなった。

一方で、別の見方もできる。

認証問題後の会社立て直し、DNGAの次世代化、軽自動車用ストロングハイブリッドの開発。

もしこれらが次期タントで一気に組み合わされるのであれば、長かった時間は単なる放置ではなく、次の軽自動車を作るための助走期間だったことになる。

元祖タントが次に発明するものは何か

タントの歴史を振り返ると、このクルマは新しくなるたびに何か一つ、分かりやすい武器を持ってきた。

初代は圧倒的な室内空間。

2代目はミラクルオープンドア。

4代目はDNGA。

だから次期タントに必要なのは、「ライトが細くなった」「モニターが大きくなった」という程度の進化ではないだろう。

仮に軽自動車用e-SMART HYBRIDが搭載されれば、100%モーター駆動という新しい価値を持つスーパーハイト軽になる。

それなら久しぶりに、ライバルがタントを追いかける展開になる可能性もある。

長く待たせた以上、「普通の新型」では物足りない

タントは2025年5月末で国内累計販売300万台を突破した。

2003年に自ら開拓したジャンルで、20年以上生き残ってきた大看板である。

だからこそ次期型への要求は高い。

8年待って、普通に新しくなりました――では少々寂しい。

軽スーパーハイトワゴンという市場を作り、ミラクルオープンドアまで発明した車なのだから、次も「そこをやるのか」と思わせてほしい。

2027年登場説も、e-SMART HYBRID搭載説も、現段階ではまだ確定情報ではない。

しかしムーヴが復活し、次世代DNGAと軽用e-SMART HYBRIDまで姿を見せた今、ダイハツが次の主力軽に何を仕込んでいるのかという期待は確実に高まっている。

タントは8年間放置されていたのか。それとも8年間、次の一発を溜めていたのか。

答えが後者なら面白い。

元祖タントが、もう一度「軽自動車の普通」を作る側へ戻れるのか。次期型を見るうえで、一番気になるのはそこだ。

参考:ダイハツ工業公式ニュースリリース
※記事内の挿絵はAIで生成したイメージです。歴代車の細部は実車と異なる場合があります。

【編集者が思うこと】

数年前にやらかしたダイハツも、新型ムーヴで少し空気を変えてきた。ただ、本当の勝負はタントだと思う。ここでコケたら「立て直した」ではなく「まだダメか」になる。人気車種って、売れるだけじゃなく会社の信用まで背負わされるから大変だよな。

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