モズって、ヤバイな。可愛い顔して獲物を串刺しにする小さな処刑人
モズという鳥を、見た目だけで判断してはいけない。
木の枝にちょこんと止まっている姿だけ見れば、そこら辺にいる少し大きめの可愛い小鳥である。ところが、こいつの食生活を知ると印象が一変する。バッタ、カマキリ、カエル、トカゲ、ネズミ、小鳥。 普通に肉食である。

しかも、ただ食うだけじゃない。捕まえた獲物を、木のトゲや尖った枝、有刺鉄線などに、グサッと刺して、そのまま残していく。これが有名な「モズのはやにえ」である。
人間が山道や田舎道を歩いていて、有刺鉄線にカエルや虫が刺さっていたら、普通はこう思うだろう。「この辺にヤバい奴がいるんじゃないか?」 と。ところが犯人は、体長20センチほどの小鳥。怖すぎるだろ。
可愛い小鳥だと思ったら、やってることはホラー
モズが獲物を刺す理由は、単なる趣味ではない。あとで食べるために保存したり、獲物を固定して食べやすくしたりする意味があると考えられている。つまりモズにとって、有刺鉄線や枝のトゲは、いわば天然の冷蔵庫であり、食卓でもある。
人間ならスーパーで肉を買って冷蔵庫に入れる。モズは虫やカエルを捕まえて鉄線に刺す。目的だけ見れば似ているが、絵面が違いすぎる。しかも腹が減ったら、前に刺しておいた場所へ戻り、「そういえば、ここに保存食があったな」みたいな感じで食べるわけである。

この行動がまた妙に賢い。単にその場で食い散らかすのではなく、先のことを考えて保存する。人間は自分たちだけが計画的だと思いがちだが、モズもなかなかのものである。
猛禽類みたいな生活を、小鳥サイズでやっている
ワシやタカなら分かる。あいつらは見た目からして、「私は肉食です」という顔をしている。鋭い爪、大きな体、曲がったクチバシ。いかにもハンターだ。
ところがモズは違う。見た目は小鳥。なのに中身はハンターである。強力な脚で獲物を押さえ込む力は猛禽類ほどではない。だからこそ、枝やトゲ、有刺鉄線を利用して獲物を固定する。つまり、「力が足りないなら周囲の環境を道具代わりに使えばいい」という、実に合理的な生存戦略なのだ。

この発想、なかなか頭がいい。自然界の中で、自分の体格や能力に合わせたやり方を編み出しているわけで、小さいからといって甘く見てはいけない。モズは小さいなりに、かなり完成された肉食鳥である。
しかも、はやにえがモテるためにも役立つ
さらに面白いのが、オスのモズである。秋から冬にかけて、はやにえを蓄えて栄養をつけると、繁殖期により活発に鳴けるようになり、結果としてメスへのアピールにも有利になるという話もある。
つまりモズの世界では、備蓄が多い男ほどモテるのである。人間社会で言えば、貯金や資産の話みたいなものかもしれない。ただし、こちらは銀行口座ではない。有刺鉄線に刺さったバッタやカエルである。ずいぶんワイルドな資産形成だ。

モズは残酷なのか?
ここで「モズって残酷だな」と言いたくなるが、それは人間の感覚である。モズからすれば、生きるために獲物を捕っているだけだ。苦しめて楽しんでいる証拠があるわけではない。
そもそも人間だって、スーパーに行けばパック詰めの肉を普通に買っている。ただ、自分で殺している場面を見ないから、残酷さを実感しにくいだけだ。そう考えると、モズはむしろ正直である。捕る、刺す、保存する、食う。 生き物として、やっていることがあまりにもストレートなのだ。

見た目で生き物を判断してはいけない
モズを見ていると、つくづく思う。自然界には、人間の「可愛い」「怖い」という基準など関係ない。可愛い顔をしていても肉食。小さくてもハンター。美しい鳴き声を出しながら、その近くの枝や有刺鉄線には、昨日捕まえた獲物が刺さっている。
このギャップが、モズという鳥の最大の魅力であり、最大の不気味さでもある。見た目は小鳥、中身は猛禽、冷蔵庫は有刺鉄線。 そう考えると、こいつは相当ヤバい。
今日ものどかな田畑のどこかで、モズは静かに枝に止まり、次の獲物を狙っている。可愛い顔に油断して近づくと、その生態のエグさにちょっと引く。やっぱりモズは、かなりヤバい鳥である。
【管理者が思うこと】
俺がモズという鳥を知ったのは、海外ドラマ『ハンニバル』の「ミネソタのモズ」だった。最初は猟奇殺人鬼につけた不気味な名前だと思っていたが、調べたら本物のモズも獲物を串刺しにする。ドラマより自然界のほうがエグい。こういう元ネタを知ると、作品も一段面白くなるんだよね。