なぜソアラは“夜の街のカリスマ”になった? Z20絶頂期とバブル時代の正体

1980年代の国産車を振り返ると、速い車も高級な車もいくらでもある。しかし、車名そのものが「モテる」「金を持っている」「都会的」といったイメージまで背負った車は、そう多くない。

その代表格がトヨタ・ソアラだ。

特に初代Z10と2代目Z20は、単なる高級クーペを超えて、当時の若者にとって「あの車に乗れる男になりたい」と思わせる存在になっていた。

1981年、ソアラは「若者が自分で運転する高級車」を作った

初代ソアラは1981年に登場した。トヨタ自身も「初めて手掛けた高級パーソナルカー」と位置付けている。

当時、高級車といえばクラウンやセドリック、グロリアのような4ドア車が中心だった。そこへソアラは、ロングノーズの2ドアクーペとして現れた。

しかも2.8リッター直列6気筒DOHC、デジタルメーター、マイコン制御オートエアコンなど、当時としてはかなり先進的な装備を持つ。トヨタの記録でも、日本に「プレステージ・スペシャルティカー」のブームを起こした車とされている。

重要なのは、単に高級だったことではない。

「偉い人が後席に乗る高級車」ではなく、「若い本人が自分で運転して遊びに行く高級車」だった。

ここでソアラ独自の立ち位置が生まれた。

白いソアラが、いつの間にか“夜の記号”になった

1980年代前半には「ハイソカー」ブームが広がり、白いボディカラーの高級車が人気を集めた。その中心にソアラがいた。

GAZOOでも、初代ソアラがハイソカー人気の代表となり、スーパーホワイトが爆発的な人気を得たことが紹介されている。当時は女子大生から人気を集めた車として語られ、「女子大生ホイホイ」という俗称まで残っている。もちろん、これは当時の社会風俗を伝える表現として見るべきものだ。

なぜソアラだったのか。

高そうに見える。2ドアだから生活臭が薄い。室内は豪華。直列6気筒で走りもいい。そして輸入高級車ほど現実離れしていない。

つまりソアラは、車そのものだけでなく、「この人は遊び方を知っていそう」「余裕がありそう」という印象まで一緒に運んでいた。

1980年代のソアラと繁華街をイメージしたAI生成画像

Z20で「ソアラ」という名前が完成した

1986年に2代目Z20が登場すると、ソアラのブランドはさらに強くなる。

3.0GTリミテッドには230PSの7M-GTEU型直列6気筒ターボを搭載。エアサスペンションやTEMS、世界初のスペースビジョンメーターなど、当時の先端技術が投入された。

しかし、Z20の価値は230PSという数字だけでは説明できない。

白いボディ、低く長いプロポーション、直列6気筒、豪華な室内。そして「ソアラ」という名前。

GAZOOでもZ20は、プレリュードやシルビアなどとは一線を画す憧れのデートカーだったと振り返られている。

プレリュードやシルビアが「格好いい若者の車」なら、ソアラにはそこへ「金を持っていそう」という要素まで加わった。

この微妙な階級差が、ソアラを普通のスペシャルティカーからカリスマへ押し上げたのだろう。

ソアラがバブルに乗ったのではない

ソアラを「バブル時代の車」とだけ片付けると、少し時系列がおかしくなる。

初代は1981年。2代目も1986年1月の発売である。つまりソアラは、バブル景気の最盛期になってから突然生まれた車ではない。

先にソアラが「若くても高級車を持つ」「車で自分の生活水準やセンスを見せる」という価値観を提示し、その後の日本社会がそこへ近づいていった、と見る方が面白い。

ソアラがバブルに乗ったというより、バブルの日本人がソアラ的になった。

これが、この車のカリスマ性を考えるうえで一番重要な部分かもしれない。

1991年、Z30は速くなったのに何かが変わった

1991年の3代目Z30では、ソアラは大きく方向転換する。

ボディは一回り大型化し、4.0リッターV8と2.5リッターツインターボを設定。2.5GTツインターボは280PSを発生した。性能だけを見れば、歴代でもかなり強烈なソアラである。

ところがデザインはZ10、Z20の直線基調から、曲面を多用した大型ラグジュアリーGTへ変わった。

Z30が悪かったわけではない。むしろ1JZ-GTE搭載車は、後年チューニングベースとして別の人気を獲得する。

ただ、「白いソアラで夜の街へ」という昭和末期のイメージからは、少しずつ離れていった。

Z40で車は残った。でも「ソアラ」は終わった

2001年登場の4代目Z40は、4.3リッターV8を搭載した電動メタルルーフのコンバーチブルクーペとなった。欧州デザインスタジオが手掛けた、歴代とはかなり異なる高級車だった。

そして2005年、日本でレクサスブランドが展開されると、Z40はレクサスSC430へ移行。ソアラという車名は消滅した。

4代目ソアラのラグジュアリー性をイメージしたAI生成画像

ここが興味深い。

SC430になって車格が下がったわけではない。むしろブランドとしてはレクサスになった。それでも昭和世代の車好きに残っているのは、「SC」より圧倒的に「ソアラ」という響きだろう。

つまり、あの時代に売られていたのは車だけではなかった。

「ソアラに乗っている自分」まで含めて商品だった。

夜の街で白い2ドアクーペを見て、多くの若者が「あれに乗りたい」と思った。速さでも実用性でもなく、名前そのものに憧れられる。

それこそが、ソアラが単なる旧車ではなく、今もカリスマとして語られる理由なのだろう。

【編集者が思うこと】

今、金と置き場所に余裕があって旧車を1台選べるなら、やっぱりMZ12の3000GTリミテッド、6M-GEUの3リッターに乗りたい。速さだけなら今の車の方が上。でも、あの角張った姿と「ソアラに乗る」という満足感は、たぶん数字じゃ代えられない。

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