マツダのスポーツカーについて、ここ数年ずっと消えない話がある。「RX-7が復活するのではないか」というものだ。
ただし、2026年8月現在、マツダが「新型RX-7を発売する」と正式発表した事実はない。車名がRX-7になることも、発売時期も未確定である。
それでも単なるネット上の願望で終わらせにくい理由がある。その中心にいるのが、マツダが2023年のジャパンモビリティショーで公開した「MAZDA ICONIC SP」だ。
今回は、このクルマがなぜ「次期RX-7」と見られているのか。そして、ロータリーエンジンの歴史を知るファンが、なぜ20年以上もその復活を待ち続けているのかを整理してみたい。

そもそもロータリーは、マツダにとって普通のエンジンではない
マツダがロータリーエンジンの開発を始めたのは1961年。当時は他メーカーも実用化を研究していたが、ローターハウジングに発生する異常摩耗など、技術的な壁は高かった。
多くのメーカーが開発から離れていく中、マツダは約6年をかけて問題を克服。1967年、世界初の量産2ローター・ロータリーエンジン搭載スポーツカー「コスモスポーツ」を発売した。491cc×2という小さなエンジンから110PSを発生し、最高速度185km/hを実現している。
その後はファミリア、カペラ、ルーチェ、サバンナ、コスモなど、今では信じられないほど多くの車種にロータリーを搭載した。北米ではロータリーエンジン搭載ピックアップまで販売している。
そして1978年、ロータリーの特性をスポーツカーとして徹底的に利用した初代サバンナRX-7が登場する。

RX-7は「ロータリーだから成立したスポーツカー」だった
RX-7は1978年の初代SA22C、1985年のFC3S、1991年のFD3Sへと進化した。
特に3代目FD3Sは、現在でもRX-7の象徴として扱われる存在だ。コンパクトな13Bロータリーにシーケンシャルツインターボを組み合わせ、軽量なボディと前後重量配分を重視した設計を採用した。
単純に馬力だけを追ったクルマではない。小型のロータリーエンジンだからこそエンジンを車体中央寄りに配置でき、低いボンネットと低重心、理想的な重量配分を狙える。

つまりRX-7とは「ロータリーを載せたスポーツカー」ではなく、「ロータリーだから作れたスポーツカー」だった。
ここが、他の名車とは少し違う。
そしてRX-7は2002年に生産終了。最後には「Spirit R」が投入され、24年間続いたRX-7の歴史はいったん幕を閉じた。
RX-8は登場した。しかし「RX-7の続き」ではなかった
翌2003年にはRX-8が登場したため、ロータリーそのものが消えたわけではない。
ただしRX-8は観音開きの4ドア、4シーターを採用した独自のスポーツカーだった。非常に面白いクルマではあるものの、低く構えた2ドアのピュアスポーツを求めるRX-7ファンからすれば、完全な後継車とは少し違う。
そのRX-8も2012年6月に生産終了した。マツダは当時からロータリーの研究開発継続を明言していたが、市販ロータリースポーツカーはここで姿を消す。
ところがマツダは、なかなかロータリーを捨てなかった。
これがファンにとって厄介だったとも言える。完全に開発終了と言われれば諦めもつく。しかし、ときどきロータリーの研究が表に出てくるため、「そのうち何か出すのではないか」という期待だけが十数年間残り続けた。

ロータリーは2023年に復活。ただしファンが欲しかった形とは違う
2023年、マツダは「MX-30 Rotary-EV」の生産を開始。RX-8終了から約11年ぶりに量産ロータリーエンジン搭載車が復活した。同年には、マツダのロータリーエンジン搭載車累計生産台数が200万台に到達している。
ただしMX-30では、ロータリーエンジンは基本的に発電を担当する。
ロータリーが復活したこと自体は大きなニュースだったが、RX-7を待っていた層からすれば、少々複雑だったはずだ。
「確かにロータリーは帰ってきた。でも、欲しいのはこれじゃない」。
そんなタイミングで公開されたのが、ICONIC SPだった。
ICONIC SPを見れば、RX-7を連想するのも無理はない
ICONIC SPは全長4,180mm、全幅1,850mm、全高1,150mm。車重1,450kg、システム最高出力370PS、前後重量配分は約50:50。かなり低く構えたコンパクトな2ドアスポーツカーである。

※画像はAIによる新型RX-7の予想イメージです。マツダ公式画像ではありません。
さらに重要なのが2ローターRotary-EVシステムを採用していることだ。
小型・軽量なロータリーを車体中央寄りに配置することで低いボンネットを実現するという説明まで出ている。この発想は、歴代RX-7がロータリーの小ささを利用してエンジンを後方へ搭載してきた考え方と重なる。
丸みを帯びたフェンダー、低いノーズ、コンパクトなキャビンを見ると、FD3Sを思い出す人が多いのも当然だろう。
ただし注意したい。
ICONIC SPは「370PSの2ローターエンジンで直接タイヤを駆動するRX-7」ではない。
現在示されている構想ではロータリーは発電機として使われ、基本的にはモーターで走行するRotary-EVである。ここを無視して「新型RX-7は2ローター370馬力」と書いてしまうと、かなり意味が変わってしまう。
さらに気になる「RE開発グループ」の復活
ICONIC SPがただのモーターショー用デザインなら、ここまでRX-7復活説は盛り上がらなかっただろう。
マツダは2024年2月、約6年ぶりに「RE開発グループ」を復活させた。
会社として公式にロータリーエンジンの研究開発を加速させ、主要市場の規制対応やカーボンニュートラル燃料への対応などを進めている。ICONIC SPへの大きな反響を受け、マツダ社長自身も「この夢に近づくべく」と説明している。
これは「RX-7発売決定」ではない。しかし、ロータリースポーツを本気で検討するための材料が揃い始めているとは言える。
なぜRX-7ファンは20年以上も待てたのか
考えてみると不思議である。
RX-7が生産終了したのは2002年。2026年現在、すでに24年が経過している。FD3Sを新車で買った20代が、今では40代、50代になっていても何ら不思議ではない。
それでも「新しいRX-7が出る」という話題が出るたびに反応する人がいる。
理由は単純で、代わりになるクルマがほとんど存在しなかったからだろう。
直列4気筒、V6、V8、水平対向、EVの高性能車なら他メーカーにも存在する。しかし、小型ロータリーを中心に車体そのものを組み立てるという発想は、ほぼマツダだけの文化になっている。
さらにマツダには1991年、4ローターの787Bでル・マン24時間レース総合優勝を果たした歴史まである。ロータリーは単なるエンジン形式ではなく、「他社がやめてもマツダだけはやる」というメーカーのキャラクターそのものになってしまった。

※画像はAI生成によるイメージです。787Bを含む車両の形状・カラーリング・スポンサー表記などは、実車と細部が異なる場合があります。
新型RX-7が出るとしても、昔のFDには戻れない
一方で、ここは現実的に見ておく必要がある。
仮に新しいRXシリーズが市販されても、1990年代のFD3Sをそのまま現代化したクルマにはならないだろう。
安全基準、排ガス規制、燃費規制、電動化への対応。スポーツカーを取り巻く条件は30年前とはまったく違う。
むしろICONIC SPを見る限り、マツダが考えているのは「昔のロータリースポーツを復刻すること」ではなく、「ロータリーを使って次の時代のスポーツカーを成立させること」ではないか。
ロータリーが直接タイヤを回さなくても、コンパクトさを利用して低重心化し、モーターと組み合わせて理想的な重量配分を作る。そう考えれば、形式は変わっても発想そのものはRX-7と意外に近い。
観測結果――「RX-7復活」はまだ早い。しかし期待する材料は十分ある
2026年8月時点で、「新型RX-7発売決定」と書くことはできない。
ICONIC SPは現在もマツダ自身が「コンパクトスポーツカーコンセプト」として紹介しており、RX-7という車名も、市販時期も、価格も正式発表されていない。
その一方で、2ローターRotary-EVを搭載した本格的なスポーツカーコンセプトを公開し、RE開発グループまで復活させた。
ここまで来ると、「またいつものRX-7復活の噂」と笑って終わらせるには少々材料が多い。
コスモスポーツから59年、初代RX-7から48年、FD3S終了から24年。
ファンが待っているのは、単に「RX-7」というエンブレムではない。
小さなロータリーを武器に、他メーカーとは違う方法でスポーツカーを作るマツダが、もう一度見たいのである。
もしICONIC SPの思想を受け継ぐ市販車に「RX-7」の名前が与えられる日が来たなら、それは昔の名車の復刻というより、24年間止まっていたRX-7の時計が、ようやくもう一度動き始める瞬間になるのかもしれない。
【編集者が思うこと】
エコだ電動化だと正論ばかり並べても、クルマが全部同じ方向を向いたら面白くない。多少時代に逆らっても、マツダにはロータリーをやってほしい。効率だけでは説明できない魅力があるからこそ、RX-7は今でも待たれているんだよね。
