個人の援交は平和だった――そこにデリヘル勤務を足したら、何が変わるのか?
40代の主婦。夫や家族には秘密。
出会い系で知り合った男性が数人いて、すでに何度も会っている。お互い家庭や仕事があり、余計な詮索もしない。連絡するときも慎重。会ったことを誰かに話すこともない。
いわば「秘密を守る者同士」で成立した、小さな閉鎖空間である。
何年も問題なく続いているなら、本人からすれば「これなら風俗で働いても、それほど変わらないのでは?」と思うかもしれない。
しかし、実際にはかなり違う。
デリヘルを追加するというのは、今いる男性が数人増えるだけの話ではない。
人間関係そのものの構造が変わるのである。
個人の常連には「秘密を守る理由」がある
個人で何度も会っている男性には、ある意味で安心感がある。
男性側も妻や彼女、会社、家族に知られたくない。女性側も同じ。

つまり双方に「この関係を外へ漏らしてはいけない」という共通利益がある。
さらに何回も会えば、性格もある程度わかってくる。
酒を飲むと面倒になる男なのか。嫉妬深いのか。LINEを何十件も送ってくるタイプなのか。
危ない人物は、常連になる前に消えていく。
その結果、残っているのは比較的安定した数人になる。
デリヘルでは、毎回「知らない男」が入口に立つ
ところが風俗では、そのフィルターが毎回リセットされる。

普通のお客さんもいる。紳士的な男性もいる。しかし、初対面では性格まではわからない。
そして怖いのは、一度会った客が「店の客」から「特別な常連」へ変化することだ。
何度も指名される。会話が増える。個人的なことを聞かれる。「休みの日は何してるの?」「本名は?」「どの辺に住んでるの?」となっていく。
さらに恋愛感情まで入れば、
「俺は他の客とは違うよね?」
という話になる。
ここから人間関係がややこしくなる。
昔からの常連だって、嫉妬するかもしれない
逆方向もある。
今まで会っていた個人常連が、デリヘル勤務を知ったらどう思うだろう。
「別に俺も遊びだから気にしない」という男もいるだろう。
しかし、意外に出てくるのが「俺は特別だと思っていた」という感情だ。
自分以外にも男性がいることは薄々わかっていても、「月に何度か密会している人妻」と「仕事として多くの男性に会っている女性」では、男性側が受ける印象は違う。

理屈では文句を言える立場ではない。それでも嫉妬する。
これが人間である。
性病は「二つの世界をつなぐ橋」になる
もう一つ無視できないのが性感染症だ。
今までは少人数の固定関係だったものに、不特定の新規客との接触が加われば、感染機会を管理する難しさも増える。
コンドームなどでリスクを下げることは重要だが、性感染症のすべてを完全に防げるわけではない。
問題なのは本人だけではない。
店の客 → 女性 → 個人常連
あるいは、その逆。
今まで完全に別だった二つの世界が、身体を通してつながってしまう可能性が生まれる。
そして最大の違いが「身バレの入口」
個人で数人と会っているだけなら、秘密を知っている人数そのものが少ない。
しかし店に所属すれば、プロフィール写真、店のサイト、スタッフ、送迎、ホテル、新規客、指名客……と、自分につながる接点が増えていく。
特に生活圏に近い場所で働けば、客が知人の知人だった、近所で偶然会った、生活圏を推測された、といった偶然の可能性も増える。
秘密というものは、人数が増えるほど「誰か一人のミス」で破れる。
今が平和だからこそ、同じ延長線だと思わないほうがいい
ここが一番重要だ。
現在、個人の常連数人と何の問題も起きていない。
それは不思議ではない。
少人数、固定メンバー、双方秘密厳守。
この三つが揃っているから、安定しているのである。
デリヘルを始めると、そのうち「少人数」と「固定メンバー」が消える。
だから風俗バイトを始めるというのは、現在の密会を週に何回か増やすことではない。
今まで閉じていた秘密の人間関係の横に、不特定多数が出入りするもう一つの世界を作ることなのだ。
もちろん何年間も問題なく働く女性もいる。
だが、もし問題が起きるとしたら、原因は「風俗だから」という単純なものではない。
昔からの常連の嫉妬。店の常連の執着。性感染症。生活圏への接近。そして身バレ。

それまで交わらなかった線が、少しずつ交差し始める。
個人密会と風俗。
似ているようで、実はこの二つ、人間関係としてはまったく別物なのである。