『リーチャー』主演アラン・リッチソンはいつからあんなにデカくなった? “巨大化20年史”

『リーチャー』主演アラン・リッチソンはいつからあんなにデカくなった? “巨大化20年史”

海外ドラマ『Reacher/リーチャー ~正義のアウトロー~』を見ていると、ときどき話の筋より気になることがある。

主演のアラン・リッチソン、いくら何でもデカすぎないか。

首は太い、胸板は壁、腕は下手な人間の脚くらいある。しかし昔の映像を見ると、同じ人物とは思えないほどスッキリしている。そこで出演作を約20年さかのぼってみたところ、意外なことが分かった。彼は突然マッチョになったのではない。筋肉の「使われ方」が変わった俳優だった。

昔は細かった? いや、最初から結構いい身体だった

リッチソンが『American Idol』シーズン3のオーディションを受けたのは2003年(放送は2004年)。その後、2005年に『ヤング・スーパーマン』のアクアマン役で本格的に俳優として注目される。

この頃の写真を見ると、現在のリーチャーとはまるで違う。細身で腹筋の割れた、いわゆるモデル系の細マッチョだ。ただし「昔はヒョロヒョロだった」というのも違う。アクアマンを演じられる程度には、最初から身体が商品になっていた。

細身のモデル体型から重量級のアクション俳優体型へ変化する男性を3段階で表したAI生成イメージAI生成による比較イメージです。アラン・リッチソン本人の写真や、各年代の正確な体格を再現したものではありません。

2010年の『Blue Mountain State』では大学アメフト部キャプテン、サッド・キャッスル。2013年の『ハンガー・ゲーム2』、2014年からの『ミュータント・タートルズ』ではラファエロを声とモーションキャプチャで演じ、2018年からの『Titans/タイタンズ』ではホークを演じた。

並べてみると分かりやすい。アクアマン時代は「身体のいい俳優」、サッド・キャッスルでは「筋肉も笑いになる俳優」、ホークでは完全な「肉体派アクション俳優」になっている。

つまり『リーチャー』以前から十分マッチョなのだ。ただし、まだ人間として普通に服が似合う。

『リーチャー』で93kgから107kgへ――ここで別の生物になる

転機は2022年開始の『Reacher』だった。

本人によると、役を得た時点では約205ポンド、つまり約93kg。それを製作側が求めるジャック・リーチャー像へ近づけるため、8か月で235ポンド、約107kgまで増量した。

単純計算で約14kg増である。

ネットではしばしば「8か月で14kgの筋肉をつけた」と紹介されるが、本人はこれを否定している。増えたのは30ポンドの体重であり、すべてが筋肉だったわけではない。本人の見積もりでは筋肉だったのは半分より少し多い程度だという。

ここは地味だが重要だ。「筋肉14kg」という伝説は、本人の話よりネットの方が盛られている。

約93kgと約107kgをイメージした同身長男性の体格差を比較するAI生成イメージAI生成による概念比較です。約93kgと約107kgの体格差を視覚化したもので、アラン・リッチソン本人の実測寸法や実際の体型を再現したものではありません。

巨大化には、ちゃんと請求書が来た

もちろん14kg増やして「めでたし、めでたし」ではない。

リッチソンは当時、長時間のトレーニングを続け、痛めても休まず身体を作った結果、撮影終了時には激しく疲弊し、肩も負傷したと語っている。本人の言葉を要約すれば、身体を作ったというより身体を壊しかけたに近い。

その後、医師の勧めでTRT(テストステロン補充療法)を始めたことも本人が公表している。シーズン1の体作りではテストステロンを使用していなかったと説明しており、その後はTRTを取り入れながら、シーズン1ほど無理なトレーニングに頼らず体格を維持する方向へ切り替えた、という時系列になる。

ここを「努力だけで誰でもリーチャーになれる」と書いたら筋トレ雑誌の広告である。あの身体は撮影、食事、トレーニング、回復まで含めたプロ俳優の仕事だ。

『Ordinary Angels』では、逆に筋肉を落とした

さらに面白いのが2024年公開の『Ordinary Angels』だ。

リッチソンが演じたのは、病気の娘を抱える父親。敵を壁へ投げ飛ばす役ではない。本人も『Reacher』とは正反対の役を演じたかったと話し、撮影前の短期間で可能な限り減量したという。

つまり彼の場合、今では珍しいのはこちらだ。

「筋肉を付ける役」ではなく、「リーチャーに見えないよう筋肉を落とす役」である。

一方、『Fast X』、『The Ministry of Ungentlemanly Warfare』、そして2026年3月配信のNetflix映画『War Machine』となると、もう巨大な身体を隠す気配はほとんどない。軍人、戦闘要員、肉体派――役のために身体を作る段階から、その身体だから役が来る段階へ入ったと見る方がしっくりくる。

役作りのトレーニングと肉体派俳優を前提に進む映画撮影準備を描いたAI生成イメージAI生成による架空の映画撮影所イメージです。実在する映画・撮影現場・出演者を再現したものではありません。

本当に「第二のシュワルツェネッガー」なのか

「第二のシュワちゃん」とまで言ってしまうと少々スポーツ新聞臭い。ただ、面白い証人がいる。

『ターミネーター2』でシュワルツェネッガーと戦ったT-1000役のロバート・パトリックだ。彼は『Reacher』シーズン2にも出演し、二人を実際に間近で見ている。

そのパトリックは2024年、当時のリッチソンについて「アランの方が大きい」と語り、二人とも巨大な身体の割によく動ける点を共通点として挙げている。

筋肉量で後継者を決めるのも乱暴だが、二人にはもう一つ共通点がある。デカいのにコメディができる。リッチソンの『Blue Mountain State』を見ると、これは昔からだった。

そして2026年12月2日にPrime Videoで世界配信予定の『The Man with the Bag』では、ついにリッチソンと本物のアーノルド・シュワルツェネッガーが共演する。筋肉俳優20年史としては、出来過ぎたオチである。

【編集者が思うこと】

最初は「リーチャーの人、昔は細かったよな」というだけの話だった。ところが調べると違った。昔から脱げば十分マッチョなのである。ただ、リーチャーになってから“いい身体”が“異常にデカい身体”へ変わった。

俺が面白いと思うのは筋肉量よりそこだ。昔の映画スターは役によって刑事にも父親にも悪党にもなったが、身体までブランド化すると、今度は普通の父親を演じるために減量しなければならない。売れた肉体が、次の役の制約にもなるわけだ。

それでも最後にはシュワちゃんと共演するところまで来た。俳優人生というより、何だかRPGのキャラクター育成を20年眺めているようである。

参考資料

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