切れ端から復活!? 川を流れて日本各地に広がる「最悪の水草」の正体

切れ端から復活!? 川を流れて日本各地に広がる「最悪の水草」の正体

2026年10月20日、テレビ朝日が東京・葛西臨海公園に流れ着いた奇妙な水草を報じた。名前は「ナガエツルノゲイトウ」。南米原産の特定外来生物である。

公園では8月と9月に漂着を確認し、除去を続けていた。ところが10月8日、残っていた茎から新しい芽と根が出ているのが見つかった。片付けたつもりでも、まだ生きていたのだ。

しかも、この植物は川を流れて移動する。下流へ運ばれた切れ端が、別の場所で新たな群落を作る可能性がある。


川の水面を覆うナガエツルノゲイトウの群落と、水流に乗って移動する茎の断片を描いたカラー劇画
ナガエツルノゲイトウが河川に大群落を形成した様子のイメージ。実在の特定河川を再現したものではない。(AI生成画像)

種を作らないのに、全国32都府県へ

ナガエツルノゲイトウの国内最初の定着記録は1989年、兵庫県尼崎市。観賞用として持ち込まれ、野外へ逸出したと考えられているが、実際の侵入時期や経路は分かっていない。

農研機構の2025年2月発表では、2024年12月時点の確認地域は26都府県。一方、東京都が2026年2月に改訂した防除の手引では32都府県となっている。

資料上の差は6都府県。26を基準に単純計算すれば約23.1%多い。ただし、調査時点と集計主体が異なり、同じ方法で継続測定した増加率ではない。植物の生育面積が23%増えたという意味でもなく、以前から存在した群落が新たに発見された可能性もある。

驚くのは、国内では種子繁殖が確認されておらず、主に茎や根の断片から増えることだ。中空で浮きやすい茎はちぎれやすく、数cmの断片でも再生できる。

川を下るだけではない。満潮で戻ってくる

荒川での報道には、さらに妙な場面があった。川を流れていた植物が、満潮時の流れに乗って上流方向にも移動するというのだ。

東京都の2026年版手引は、荒川上流の埼玉県にも分布があることを示し、同じ水系内での拡散に注意を促している。さらに、海流や上げ潮によって別の河口へ広がる可能性にも言及している。

ただし、海を漂流した植物が別の河川で実際に定着したと証明されたわけではない。10月20日の報道でも、専門家は海上漂流から定着に至るデータがまだないと説明している。

確認されているのは、河川の水流による移動と、流れ着いた場所での再生。海を経由した拡散は、今後検証すべき可能性である。


河口付近で川の流れと満潮時の逆流によって水草が移動する仕組みを表現した模式イラスト
河口付近では、潮の満ち引きによって水流の向きが変化する。異なる時間帯の流況を一画面で表現した模式イメージであり、実際の同時観測図ではない。(AI生成画像)

役所が草刈りをしたら、かえって広がる?

ここで自治体の現場にとって困った問題が出てくる。普通の雑草なら刈払機で処理できるが、この植物はそう簡単ではない。

東京都の手引は、地上部だけの刈り払いでは地下部を除去できず、断片を拡散させるおそれがあると警告している。だからといって駆除してはいけないわけではない。根を含めた回収と、断片の流出防止が重要なのだ。

国の駆除マニュアルには、作業場所の下流側へ網やフェンスを設置する方法が掲載されている。東京都の手引では、下流側の自治体や施設管理者へ作業前に通知することまで推奨している。

つまり、自分の自治体での草刈りが終わっても、流出した断片が隣の自治体で問題を起こす可能性がある。植物には行政区域の境界など関係ないのである。

さらに、生きた個体の保管・運搬は外来生物法による規制対象。適切な防除手続きや、小規模駆除に認められる条件を確認する必要がある。河川での作業には、河川管理者の承認が必要となる場合もある。

水路工事で出た泥まで厄介だった

もう一つ、国の2025年改訂マニュアルで注目したのが、駆除後の泥土処理である。

水路を掘り直せば、植物の根や茎が混じった泥土が大量に出る。これを別の場所で使えば、植物まで運んでしまう危険がある。

従来、遮光して約2年間処理した事例もあった。ところがマニュアルには、夏の熱を利用して泥土を処理する「陽熱処理」が掲載されている。

条件が整えば、夏季の1〜3か月で再利用可能な状態にできるという。ただし、適用検討の目安は8月の平均気温が概ね29℃以上となる地域で、8月上旬までの処理開始が必要。盛土をシートで密閉し、内部が40℃以上だった時間を累計200時間以上確保することが処理終了判断の目安となる。最後は再生株が残っていないか確認する。

単純に比較すれば、従来事例の約24か月に対して1〜3か月。計算上、処理用地を使用する期間を約8分の1〜24分の1に短縮できる可能性がある。ただし、どの自治体でも実施できるわけではなく、処理費用まで同じ比率で減るという意味でもない。


水路から取り出した泥土を不透水性シート上に盛り、透明なシートで覆って夏の日射熱で処理する様子
泥土の陽熱処理を表したイメージ。実施工ではシートの裾をパッカー等で密閉し、温度管理と処理後の再生確認を行う。国の施工事例をそのまま再現したものではない。(AI生成画像)

見つけた場所だけを見ていては終わらない

自治体職員が発見情報を受けた場合、重要なのは位置と写真だけではない。東京都の手引では、漂着しているだけなのか、既に根を張っているのか、群落の大きさ、通水への影響なども記録対象としている。

また、発見されなかった場所も記録するよう求めている。後日、新たな侵入が起きた時期を推定するためだ。

排水機場のスクリーンを塞ぎ、水田へ入り込み、場合によっては干潟まで覆う。ナガエツルノゲイトウの問題は、もはや単なる景観上の雑草問題ではない。

厄介なのは繁殖力だけではない。河川、農地、公園、排水施設という管理の境界を、植物が勝手に越えてしまうことなのだ。

【編集者が思うこと】

最初は、川に変な水草が大量に流れてきたのか、程度に思っていた。ところが調べてみると、こいつは実に面倒くさい。

上流で増えた草が下流の町へやって来る。刈り方を間違えれば自分で切れ端を送り出す。しかも回収した泥まで簡単には捨てられない。

特に気になったのは、東京都の手引にある「下流側の自治体への通知」という部分だ。普通の草刈りでは、隣町に事前連絡なんて考えないだろう。

結局、これは水草の駆除であると同時に、自治体同士の連携の問題でもある。いやはや、たかが草とは言えない。なかなか手ごわい相手である。

参考資料

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