テレビでよく見かけた芸能人やスポーツ選手が、いつの間にか地上波から姿を消している。しかし、久しぶりに名前を検索すると、YouTubeを毎週更新していたり、ブログを書いていたり、飲食店を経営していたりする。
「テレビに出なくなったら収入も激減する」と思いがちだが、現在は必ずしもそうではない。むしろある程度の知名度が残っている人ほど、自分で客を集められる時代になっている。

※本記事の「テレビから消えた」は、テレビ出演の機会が以前より減った状態を便宜的に表現したものです。特定の人物について、人気低下、トラブル、契約事情などを推測するものではありません。また以下の金額は公開されている料金相場などを基にしたモデル計算で、個人の実収入を示すものではありません。
テレビ出演は高そうに見えて、毎日ある仕事ではない
公開されているキャスティング会社の料金例を見ると、バラエティ番組への出演料は1回5万~20万円程度という目安がある。イベントや講演になると幅は広がり、数十万円から100万円を超えるケースもある。
仮にテレビ出演が月4回、1回10万円なら40万円。講演会が月1回50万円なら50万円だ。
もちろん十分な金額だが、最大の弱点は「呼ばれなければ0円」ということ。番組もイベントも仕事を発注する側が主導権を持っている。

YouTubeは小さな収入源を何本も束ねられる
YouTubeは広告単価が一定ではないため、「1再生いくら」と断定することはできない。そこでRPM(1000再生あたりの収益)を100~450円程度と仮定すると、月100万再生で約10万~45万円になる。
広告だけなら、意外に少ない。しかしYouTubeには別の財布がある。
企業案件では、平均10万再生規模のチャンネルで1本20万~100万円程度という料金例もある。さらに月額メンバーシップ、ライブ配信、物販などを組み合わせられる。
YouTube公式では、メンバーシップなどファン課金の純収益についてクリエイターへの分配率を70%としている。仮に月490円の会員が1000人なら売上規模は49万円。実際の受取額は税や手数料などによって変わるが、単純計算では30万円台になる。
「昔のファンが残っている」が強烈な資産になる
ここで、かつてテレビで知られた人ならではの強みが出てくる。
新人YouTuberはまず名前を覚えてもらうところから始める。しかし元芸能人や元スポーツ選手なら、何万人、場合によっては何十万人もの人がすでに顔や名前を知っている。
テレビでは「今の視聴率を取れるか」が重要でも、ネットでは昔から好きだった5000人が残っているだけでも商売になる。広く浅い人気から、狭く濃い固定客へ。ここがテレビとYouTubeの大きな違いだ。

ブログも「日記」だけでは終わらない
ブログにも広告、アフィリエイト、PR記事という収益源がある。Amebaでも商品紹介による成果報酬や、PR投稿の執筆報酬という仕組みが用意されている。
そのため有名人ブログは、単に「今日は何を食べた」という日記ではない。読者が多ければ、服、食品、旅行、サービスなどの紹介そのものが収益につながる可能性がある。
飲食店は華やかだが、数字を見るとかなり厳しい
一方、テレビで見なくなった人が飲食店を始めるケースもある。ただし、これはYouTube以上に簡単な商売ではない。
日本政策金融公庫の2025年度調査では、一般飲食店のうち黒字かつ自己資本がプラスの企業でも、売上高営業利益率は約5%だった。
利益率5%として単純計算すると、月商500万円でも営業利益25万円、月商1000万円で50万円。そこまで売ってようやくこの数字である。

テレビから消えても「商売から消えた」とは限らない
モデルケースとして、月100万再生、企業案件1本、メンバー1000人のチャンネルを考えると、広告30万円、企業案件20万~100万円、ファン課金30万円台として、月80万~160万円前後の売上規模も見えてくる。もちろん制作費や事務所の取り分、税金などは別だ。
こうして比べると、テレビにたまに呼ばれるより、自分のYouTubeを育てたくなる理由も分かる。
昔はテレビから姿を消せば「最近見ない人」になった。今は違う。テレビという巨大な店から出ても、自分の小さな店をネット上に持てる。しかも昔のファンまで連れていける。
芸能人にとってYouTubeは、落ちた後の避難場所というより、テレビ局を通さず自分で客を集める第二の芸能ビジネスになっているのかもしれない。
【編集者が思うこと】
昔なら、テレビや事務所に切られたら反論する場所すらなかった。今は自分の口で話せるし、昔のファンも探しに来てくれる。ただ、そのぶん失言も過去もずっと残る。自由を手に入れた代わりに、逃げ場も減った時代なのかもしれない。
