DaVinci Resolve 21.1は何が変わった?20→21の進化と“AIがResolveを使う”新時代

DaVinci Resolve 21.1は、見た目だけなら「21.0系の次に来たアップデート」に見える。だが中身を追うと、これは単なる細かな修正ではない。20で“AIを使う編集ソフト”へ舵を切ったResolveが、Studio 21.1では“AIがResolveを使う入口”まで用意した、少し意味の違う更新である。

しかも今回の変化は、Studio版の高度な自動化だけの話では終わらない。Photoページの強化、マルチカムやトリム操作の改善など、無料版ユーザーにも関係する改良が重なっている。DaVinci Resolveをこれから導入しようとしている人にとっても、いま何が起きているのかを把握しておく価値は大きい。

時系列を正式版の公開日で揃えると、DaVinci Resolve 20は2025年5月28日、21は2026年6月3日、そして21.1は2026年9月8日に公開された。20と21は正式版公開前に発表とパブリックベータが行われているため、ここでは比較しやすいよう正式版の公開日で統一する。

Resolve 20で起きたのは、「AIが編集機能になった」こと


DaVinci Resolve 20でAI機能が編集工程に統合されるイメージ

まず整理しておきたいのは、20の役割だ。DaVinci Resolve 20では、AI IntelliScript、AIアニメート字幕、AIマルチカムSmartSwitch、AIオーディオアシスタント、Magic Mask 2、Depth Mapの強化など、AIが“別サービス”ではなく、編集機能そのものとしてソフト内部に入ってきた。ここでのAIは、人間の代わりに作品を作る存在というより、面倒で時間のかかる作業を短縮する補助装置だった。

この段階での構図は分かりやすい。人がResolveを操作し、その中にあるAI機能を使う。つまり、編集の主導権はあくまで人間側にあり、AIはその一部工程を高速化する部品だった。Resolve 20は、その意味で“AI編集元年”と呼んでも大げさではない世代だったと言える。

Resolve 21では、動画編集ソフトの枠そのものが広がった


DaVinci Resolve 21で動画・写真・カラー・音声制作の領域が広がったイメージ

続く21では、方向性がもう一段変わった。ここで象徴的なのがPhotoページの新設である。DaVinci Resolveは従来、編集・カラー・Fusion・Fairlightを一体化した総合ポストプロダクション環境として強かったが、21ではそこへスチル写真編集まで取り込んだ。RAW写真を扱い、ノードベースのグレーディングやPower Window、ResolveFXまで写真側へ持ち込めるようになったのは、かなり大きい。

さらに21では、AI IntelliSearchによる素材検索、AI CineFocusによるフォーカス調整、顔補正系のAI機能、FusionへのKrokodoveツール群、Fairlightのフォルダートラックなど、動画編集ソフトの周辺機能が一気に厚くなった。ここでのResolveは、もはや単なるNLEではない。「動画編集ソフト」から「映像・写真・音・VFXを束ねる制作環境」へ広がったと見る方が正確だ。

21.1は、単なる修正版ではなく「役割の反転」が見える


DaVinci Resolve Studio 21.1へのアップデートを表現したイメージ
実際のアップデート画面を参考にしたAI生成イメージ。画面構成や表示内容の一部は実際のUIと異なります。

今回、手元のWindows環境でもDaVinci Resolve Studio 21.0.4 BUILD 5から21.1 BUILD 14への更新を確認した。アップデート後の新機能案内には、AIアシスタントコントロール、マルチカム機能の強化、オーディオ波形のスケーリング、検索機能の強化、カメラキャプチャー機能の拡充、インスペクタのプリセット、Krokodoveグラフィックなどが並んでいた。

今回の21.1で最も象徴的なのは、Blackmagic Design自身がAI assistant integrationを前面に出している点だ。より正確には、DaVinci Resolve Studio 21.1にはAIアシスタントと接続するためのネイティブMCP(Model Context Protocol)サーバーが追加された。ここで見えてくるのは、20までの「Resolveの中にAIがある」という形から、「外部のAIアシスタントがResolveを操作する」という方向への一歩である。

もちろん、ここで勘違いしてはいけない。21.1になったからといって、ChatGPTのようなAIへ「いい感じに1本作って」と言えば、センスのある動画が勝手に完成するわけではない。現時点で現実的なのは、プロジェクトの解析、素材整理、設定変更、反復処理、レンダリングのような、ルール化しやすい工程の自動化だ。だが、それでも意味は大きい。従来のAIは“ソフトの機能”だったのに対し、21.1のAI連携は“ソフトを扱う作業者”に少し近づいたからだ。


AIアシスタントがDaVinci Resolveの編集作業を支援する概念イメージ

しかもBlackmagic Designは21.1を、AI連携だけでなくスチル写真サポートの拡張と、100種類以上の新しいツール/コントロールを含むメジャーアップデートとして打ち出している。つまり今回の21.1は、単独の目玉機能だけを見るより、Resolve全体の設計思想が一段先へ進んだ更新として捉えた方がいい。

地味だが実務では効く、21.1の改善点


DaVinci Resolve 21.1のマルチカムや写真編集などの改善を表現したイメージ

ニュースとして目立つのはAIアシスタント連携だが、実務上はそれ以上に効く改良も多い。たとえば21.1では、Photoページの対応拡大が進み、編集・カラー現場だけでなく写真ワークフローの実用性も上がった。また、マルチカムや編集操作周りの改善、エディターやカラリスト向けの細かなコントロール追加も含まれている。

こういう変更は、SNSの見出しだけ追うと地味に見える。しかし実際には、初心者が最初につまずくのも、ヘビーユーザーが毎日イラッとするのも、こうした細かな作業性の部分だ。21.1は“AIの夢”を語る更新であると同時に、“いつもの作業を少し楽にする更新”でもある。そこを見落とすと、今回の価値を半分しか拾えない。

無料版ユーザーにも意味はある。ただしAI連携はStudio版だ

DaVinci Resolveの魅力は、いまでも無料版の強さにある。しかも21.1の価値は、Studio版の高機能ユーザーだけのものではない。Photoページ強化や各ページの操作改善は、導入検討中の人にとっても素直に恩恵がある。

一方で、今回の“21.1らしさ”の中心にあるAIアシスタント連携や高度なスクリプティングはStudio版の領域である。Blackmagic Designの公式サイトでも、DaVinci Resolve Studio 21はDaVinci Neural Engine、多数のResolveFX、高度なHDRグレーディングなどを備える上位版として案内され、国内価格は税込51,980円とされている。したがって21.1を見て「すべて無料版で使える」と期待するのは違うが、逆に言えば無料版だけでも本格的な動画編集は可能で、さらにAI・自動化・高度な機能が必要になった人がStudio版へ進むという位置付けが分かりやすい。

これから始める人にとって、21.1はむしろ追い風

DaVinci Resolveは高機能すぎて怖い、と感じる人は多い。FusionもColorもFairlightもあるせいで、最初から全部覚えないと使えないように見えるからだ。だが実際には、動画のカット編集、テロップ、BGM、簡単な色調整くらいなら、無料版でも十分に始められる。そして21.1の流れは、Resolveが“難しい玄人専用ソフト”ではなく、“入口は広く、奥行きは深いソフト”へさらに近づいていることを示している。

重いのは事実、機能が多すぎるのも事実。だが、その多機能さをいきなり全部使う必要はない。編集を始める人はまず無料版で入り、必要な機能が明確になった時点でStudio版を検討すればいい。その判断材料としても、21.1はかなり分かりやすい節目である。

20では、AIはResolveの中にいた。21では、Resolveは動画編集ソフトの枠から少しはみ出した。そしてStudio 21.1では、AIがResolveを扱うという新しい入口まで見えてきた。いま起きているのは機能追加だけではなく、編集者・AI・ソフトの関係そのものの変化である。DaVinci Resolve 21.1は、その変化をかなりはっきり示したアップデートだった。

【編集者が思うこと】

正直、昔のアップデート記事って「新機能が増えました」で終わりがちだった。でも今回はそこじゃないんだよな。Resolve 20はAIを中へ入れた。21は写真まで飲み込んだ。21.1は、とうとうAIにResolveを触らせる方向まで来た。実際に21.0.4から更新して新機能一覧を見ても、単なるバグ修正版とは雰囲気が違う。とはいえ、だから急に全員が映画監督になれるわけでもない。結局、何を残して何を切るか、そのセンスだけはまだ人間の仕事だと思う。逆に言えば、面倒な整理や下ごしらえをAIに投げて、人間は“見せ方”に集中する。DaVinci Resolveは、そういう道具になりつつあるんじゃないか。

参考資料

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