また、亀山薫から神戸尊へ――。
2026年10月13日、テレビ朝日は『相棒 season25』で、寺脇康文演じる亀山薫から、及川光博演じる神戸尊へ相棒を交代すると正式発表した。10月21日からの新シーズン、その途中でバトンが渡されるという。
ちょっと待ってほしい。この組み合わせ、見覚えがあるぞ。2008年に亀山が卒業し、翌2009年に神戸が登場した、あの流れではないか。
26年続いた刑事ドラマが、17年前の相棒交代をもう一度やる。しかも新しい俳優ではなく、14年前に卒業した人物を戻すというのだ。
単なる懐古趣味なのか。それとも、長寿シリーズだからこそ可能になった仕掛けなのか。過去の放送記録を調べてみると、意外な違いが見えてきた。
4人しかいないのに、6代目相棒が誕生する
まず、歴代相棒を整理したい。杉下右京(水谷豊)の正式な相棒として数えられてきた主要人物は、亀山薫、神戸尊、甲斐享(成宮寛貴)、冠城亘(反町隆史)の4人。2022年に亀山が戻り、5代目となった。
| 時期 | 相棒 | 代数 |
|---|---|---|
| 2000~2008年 | 亀山薫 | 初代 |
| 2009~2012年 | 神戸尊 | 2代目 |
| 2012~2015年 | 甲斐享 | 3代目 |
| 2015~2022年 | 冠城亘 | 4代目 |
| 2022~2026年 | 亀山薫 | 5代目 |
| 2026年~予定 | 神戸尊 | 6代目 |
※2008年末から2009年3月までは固定の相棒が不在。2026年の交代時期は未発表。
つまり、6代目といっても、俳優が6人いたわけではない。4人を6つの任期に分けて数えている。 この数字だけでも、普通の刑事ドラマではない。
2008年の交代には、91日間の空白があった
2008年12月17日放送、season7第9話「レベル4~後篇・薫最後の事件」。亀山は旧友の遺志を継ぎ、妻の美和子とともに架空の国サルウィンへ旅立った。
しかし、次の神戸尊が登場するのは2009年3月18日、season7最終話「特命」だった。
放送日を実際に引き算すると、2008年12月17日から2009年3月18日までは91日間。 これは放送日間の経過日数であり、劇中の時間を示すものではない。その間の第10話から第18話まで、実に9話にわたり、右京には固定の相棒がいなかった。
右京が単独で、あるいはその回ごとの協力者とともに事件に向き合う、シリーズでも珍しい時期だったのである。

亀山薫の卒業後、9話にわたり固定の相棒が不在となった特命係をイメージしたAI生成イラスト。実際のドラマ場面ではない。
ところが2026年の発表は、同じseason25の中で亀山から神戸へ交代するというもの。空白期間があるのか、同じ事件を通じて引き継ぐのかは、まだ明らかになっていない。
似ているようで、交代の仕組みはまだ同じと決まっていないのだ。
そもそも神戸尊は「右京を監視するスパイ」だった
もう一つ、忘れてはいけない違いがある。
2009年に現れた神戸尊は、右京と組みたくて特命係に来たわけではない。警察庁上層部の密命を受け、特命係が組織に必要かを調べる監視役だった。
言ってみれば、相棒どころか、右京を品定めする側の人間だったのである。
しかし、season8最終回では警察庁への復帰話を断り、自分の意思で特命係に残った。そしてseason10最終回「罪と罰」では、クローン人間をめぐる事件で右京と正義のあり方をめぐって対立。右京に信念を曲げさせた負い目から特命係を去ろうと考えたが、最後は上層部の意向によって警察庁へ戻された。
右京の優秀さに感心するだけの部下ではない。時には右京の正義にさえ異議を唱える、厄介で貴重な相棒だった。
亀山と神戸では、右京の別の顔が見える
亀山は人情と行動力の男。右京が冷静に事件を組み立てる一方、亀山は被害者や関係者の心へ踏み込んでいく。二人の違いが事件解決の力になる。
対する神戸は、右京と同じく頭の回転が速い。互いに推理し、張り合い、時には正義の判断そのもので衝突する。
この違いは2023年のseason21第20話「13~死者の身代金」でも顔を出した。亀山と神戸が初めて対面した回で、神戸は、かつて右京から「君は亀山くんの代わりにはなれません」と言われたことを振り返っている。
これはなかなか深い。右京にとって相棒とは、前任者の穴を埋める交換部品ではなかった。 神戸には神戸の役割があるという解釈ができる。

杉下右京を中心に、亀山薫と神戸尊という二人の相棒の関係をイメージしたAI生成イラスト。実際のドラマ場面ではない。
2023年、実は二人はもう出会っていた
2026年の再交代が唐突に見えるのは、神戸が2012年でドラマから完全に消えたと思っているからかもしれない。
実際には、警察庁へ戻った神戸は、その後も事件に協力している。2019年のseason17元日スペシャル「ディーバ」では、冠城亘を救うために駆けつけた。
そして2023年3月8日、season21第20話で亀山と初対面。神戸は警察庁側の立場で捜査に加わり、翌週の最終回にも登場した。
つまり、今回の交代の3年半ほど前に、初代と2代目が同じ事件に参加する場面は、すでに描かれていた。
2023年の共演が2026年の再登板を見越した伏線だったという証拠はない。ただし、神戸が再び右京と事件を追える人物であることは、物語の中で確認済みだったわけだ。
それでも、なぜ新人ではなく神戸なのか
テレビ朝日の2026年10月13日発表では、水谷豊が、長い歴史を重ねた『相棒』だからこそできる試みだと説明している。一方で、新しい俳優を起用しなかった具体的な理由までは明らかにしていない。
ここからは編集部の見方だ。
初登場時の神戸は、特命係の存在価値を調査する外部の監視者だった。2026年の神戸は、右京のやり方も危うさも知り、自分の正義のために右京と衝突した経験まで持つ元相棒である。
しかも、警察庁の内部事情を知り、現在も組織に籍を置いている。新人を迎えて信頼関係を作る物語とは、出発点そのものが違う。
2009年は「この男は相棒になれるのか」。2026年は「相棒だった男が、なぜもう一度戻るのか」。同じ顔ぶれでも、物語の問いが逆転している。
復帰理由も、亀山の退場理由も、まだ不明だ。だからこそ、これからの展開には注目したい。
【編集者が思うこと】
今回の交代、最初は「おいおい、また神戸かよ」と思った。新しい相棒を連れてくれば済む話じゃないのか、と。
ところが、2008年からの放送記録を調べ直すと、妙に納得する部分があった。亀山がいなくなったあと、右京は9話も固定の相棒なしでやっていた。そして、ようやく来た男が、まさかの監視役だった。
それが17年後、警察庁に戻った神戸がもう一度特命係へ来るという。今度は右京が何者か、知らないはずがない。
俺が気になるのは、神戸が戻ること以上に、右京が彼をどう迎えるかだ。もう一度「ようこそ、特命係へ」と言うのか。それとも、長い付き合いだからこそ、何も言わずに受け入れるのか。
初代と2代目を再投入するなんて、普通ならネタ切れを疑う。でも『相棒』の場合、過去の事件と人間関係がたっぷり残っている。古い登場人物を戻すことで、逆に新しい話が作れる。そこが今回の面白さじゃないだろうか。
相棒 4部作
亀山薫から神戸尊へ、17年前の交代劇が再び。2008年の亀山卒業、神戸尊の降板をめぐる噂、そして2026年の再交代が意味するものを、当時の資料と本人の発言から全4回で検証します。
- 第1回: 『相棒』が2009年に逆戻り!?――亀山薫から神戸尊へ、なぜ今またミッチーなのか
- 第2回: 亀山薫は『相棒』を追われたのか?――人気絶頂の降板劇と15年後の「武者修行」証言 公開予定
- 第3回: 準備中 公開予定
- 完結編: 準備中 公開予定
参考資料
- テレビ朝日『相棒 season25』2026年10月13日公式発表(交代の発表、登場人物の経歴、出演者コメント)
- テレビ朝日「#右京と歴代相棒」(歴代相棒の経歴、神戸の監視任務と卒業)
- テレビ朝日ブログ掲載「相棒ラボ」第5回(ファン執筆の放送回整理。亀山卒業回と神戸初登場回の放送日)
- 放送ライブラリー『相棒 season7』最終回「特命」(2009年3月18日の放送記録)
- テレビ朝日『相棒 season17』第10話「ディーバ」(2019年の神戸尊再登場)
- テレビ朝日『相棒 season21』第20話「13~死者の身代金」(2023年3月8日の放送内容)
- テレ朝POST「神戸尊、亀山薫とついに初対面」(2023年3月1日公開の番組関連資料)
- ORICON NEWS・2023年3月8日放送回の報道(右京の過去の言葉を振り返る場面)
