パワーストーン。
恋愛運が上がる。
金運が上がる。
仕事運が上がる。
邪気を払う。
人間関係が良くなる。
石ころ一個に、ずいぶん働かせるものである。
俺は最初から言ってしまう。

そんなパワー、本当にあるのか?
少なくとも、一般に売られているパワーストーンが、人間の運勢や金運を変えるという科学的根拠は確認されていない。
それでも「信じる者は救われる」で楽しむなら別にいい。
アクセサリーとして綺麗だ。
お気に入りの石を身につけると気分が上がる。
それなら何の問題もない。
だが「この石には特殊なエネルギーがあります」と言い始めた瞬間、俺はどうしても一つ聞きたくなる。

だったら、なんでど真ん中に穴を開けているんだ?
パワーストーンのブレスレットを見てほしい。
丸く削られ、ピカピカに研磨され、中心にはゴムを通すための穴が貫通している。
神秘の力を秘めたありがたい石なのに、
切る。
削る。
磨く。
ドリルで穴を開ける。
最後はゴムを通して手首に巻く。

扱いが完全に工業部品なのである。
もし、本当に石の内部に何らかの未知のエネルギーが存在するなら、普通は加工による影響を考えるだろう。
磁石だって割れば形状が変わる。
水晶だって切り出し方や結晶方向によって物理的特性は変化する。
電子部品なら、中央に穴を開けておいて「性能は一切変わりません」なんて簡単には言えない。
ところがパワーストーンになると突然、
「石の波動は失われません」
「エネルギーは石全体から出ています」
「浄化すれば元に戻ります」
などと、都合のいい話が始まる。
だったらその“波動”、一度測ってみてほしい。
穴を開ける前が100パワー。
穴を開けたら82パワー。
浄化したら97パワーまで回復。
せめてこれくらい数字で見せてくれれば面白い。
しかし現実には、そんな客観的な測定単位すらない。
それなのに、
「最近疲れているあなたには、この石が必要です」
「今のあなたはエネルギーが弱っています」
「こちらの石のほうが波動が強いです」
などと言われる。
おいおい。
測定器はどこにあるんだ。
店員の額に波動メーターでも付いているのか。
さらに面白いのが「浄化」だ。
月光に当てる。
水晶の上に置く。
セージの煙を当てる。
塩で清める。
どうやら石も働きすぎると疲れるらしい。
恋愛運を上げ、金運を上げ、邪気まで吸い取らされれば、確かに石だってブラック労働である。
だが、ここでも疑問が残る。
ドリルで中心を貫通されても平気なのに、人間の「悪い気」程度で疲れるのか。
そこ、耐久力の設定がおかしくないか。
もちろん、パワーストーンそのものを否定しているわけではない。
鉱物は美しい。
天然石には独特の模様や色があり、アクセサリーとして十分魅力的だ。
好きな石を身につけることで安心したり、「今日も頑張ろう」と思えるなら、それは心理的な意味では立派な効果だろう。
問題なのは、その気分の変化を「石が宇宙のエネルギーを放射した結果」みたいに話を膨らませることだ。
500円の石が5000円になる。
5000円の石が「最高級の波動」で5万円になる。
こうなると石のパワーより、売る側の営業力のほうが圧倒的に強い。
結局、パワーストーンで一番確実に金運が上がるのは誰なのか。
答えは簡単だ。
買った人ではなく、売った人である。

神秘の石。
幸運の石。
人生を変える石。
そんな大層な名前を付けられながら、今日も工場では丸く削られ、研磨され、ドリルでど真ん中を貫通されている。
それでもパワーは減らないらしい。
だったらもう、石が凄いというより、
その設定を信じさせる人間のパワーのほうが、よほど恐ろしい。
【管理者が思うこと】
信じるのは自由。でも、削って磨いて、最後はドリルでど真ん中に穴を開けた石に「神秘のパワー」と言われても、俺にはただの石にしか見えない。結局、一番すごいのは石の力じゃなく、人間の「信じ込む力」なんじゃないかな。