2018年11月、東京・台東区で起きた約4700万円を狙った強盗未遂事件が、2026年9月になって再び大きく動いた。警視庁は9月15日、事件後に韓国へ出国していた韓国籍の男2人を逮捕した。8年前のニュースを覚えていた人には「まだ追っていたのか」と驚きがあり、未解決事件好きにはかなり刺さる展開だろう。
しかもこの事件、単なる“昔の強盗未遂が今ごろ解決に近づいた話”では終わらない。犯行からわずか8時間後に国外へ出ていたこと、それでも時効に逃げ切れない仕組みがあること、さらに事件の全体像がまだ完全には見えていないことが、この件を妙に面白くしている。
銀行を出た直後を狙った時点で、偶然の犯行ではない
事件が起きたのは2018年11月12日。台東区松が谷の路上で、貴金属買い取り会社の関係者らが、銀行から引き出したばかりの現金を持っていたところを5人組に襲われた。犯人側は催涙スプレーを使い、現金入りバッグを奪おうとしたが、被害者側が抵抗したため未遂に終わった。
ここでまず引っ掛かるのは、標的の選び方だ。たまたま通りかかった人間ではなく、「まとまった現金を持って銀行から出てくる人物」を狙っている。これは街頭の思いつき犯行では説明しにくい。2018年当時の報道でも、警視庁は情報提供者がいる可能性を視野に調べていたとされる。
※AI生成によるイメージ。実際の現場・銀行・店舗・人物を再現したものではありません。事件現場は貴金属買い取り店前の路上です。
事件の核心は「8年後の逮捕」より「8時間後の出国」にある
2018年当時、実行グループのうち2人が日本国内で逮捕された。一方、残る3人は事件当日に韓国へ出国したと報じられている。そして今回逮捕されたノ・ヒョンドン容疑者とキム・テホ容疑者については、犯行のおよそ8時間後に成田空港から韓国へ出国したことが警視庁への取材で明らかになっている。
この流れを見ると、面白いのは“8年後に捕まった”ことより、むしろ犯行当日のうちに国外へ出ていることだ。2018年当時の一部報道では、警視庁はこうした動きを、犯行後すぐ国外へ出る「ヒット・アンド・アウェー」型の犯行とみていた。日本国内だけで完結する雑な強盗ではなく、国外への移動まで含めた犯行だった可能性が見えてくる。
さらに今回の報道では、2人は当時観光旅行で日本を訪れ、都内の公園で知り合った外国人から犯行を持ち掛けられたとみられている。もしこの捜査情報が事実なら、さらに気になるのはその先だ。その外国人は誰なのか。現金の動きを知っていた人物なのか。5人組を集めた人物なのか。逮捕で終わったように見えて、実は謎が一段深くなっている。
※AI生成によるイメージ。実際の人物や成田空港内部を再現したものではありません。時計は「犯行約8時間後」を象徴した演出です。
なぜ今になって捕まったのか
警察は2018年の時点で国外へ出た3人について逮捕状を取り、国際手配を進めていた。つまり、最近になって突然犯人像が浮かんだのではなく、かなり早い段階から行方を追っていたことになる。
そして2026年9月15日、事件はようやく動いた。時事通信系の報道によると、今回の2人は韓国側から身柄の引き渡しを受け、警視庁が逮捕したとされる。日本と韓国の間には2002年に発効した犯罪人引渡条約があり、国外にいる容疑者の身柄を相手国から引き渡してもらう制度が存在する。
ただし、ここにもまだ空白がある。なぜ身柄引き渡しまで約8年を要したのか、韓国側で2人がどのような状況にあったのか、具体的にどの時点から引き渡し手続きが進んでいたのかは、速報段階では詳しく明らかになっていない。「なぜ今だったのか」には答えが一つ出たが、「なぜ8年かかったのか」はまだ残っている。
8年たっても時効で逃げ切れない理由
事件を知らない人がまず思うのは、「8年も前なら、もう時効が近いのではないか」という点だろう。だが、この感覚は半分正しくて半分違う。刑事訴訟法255条では、犯人が国外にいる期間は公訴時効の進行が停止すると定められている。要するに、日本から国外へ出ている時間について、時効の時計がそのまま進み続けるわけではない。
つまり今回の事件は、8年たったから埋もれたのではなく、長期間が経過しても、国外滞在中は時効が進まない仕組みが捜査を支えていたということになる。事件を追い続ける警察の捜査と、それを可能にする法律の両方があって成立した8年越しの逮捕である。
※AI生成によるイメージ。実際の警視庁の捜査本部、捜査資料、人物写真を再現したものではありません。
逮捕は前進だが、事件はまだ終わっていない
今回の2人の逮捕により、5人組とみられる実行グループのうち4人が日本で逮捕されたことになる。しかし、警視庁は現在も残る1人の行方を追っている。
さらに、2018年当時の報道では、被害者らが銀行から多額の現金を引き出した直後に襲われたことから、警視庁は情報提供者の存在も視野に捜査していたとされる。今回報じられた「公園で犯行を持ち掛けた外国人」と、その情報提供者が同一人物なのか、別の人物なのかも現時点では分からない。
だからこの事件は、「8年越しの解決劇」として見るより、「8年ぶりに事件の扉が再び大きく開いた」と見る方が面白い。未解決事件好きの視点でいえば、本当に知りたいのは逮捕そのものより、今回の2人の取り調べによって、8年前には見えなかった人物関係や情報の流れがどこまで明らかになるのかである。
【編集者が思うこと】
こういうニュースを見ると、やっぱり「国外へ逃げて時間がたてば終わり」ではないんだなと思う。事件当日に韓国へ出て、それから8年。普通なら、とっくに昔のニュースになっている。それでも日本側は国際手配を続け、最終的には韓国側から身柄の引き渡しを受けて逮捕まで持ってきた。これは素直に大したものだと思う。
しかも、これで全部スッキリしたわけではない。まだ1人残っているし、4700万円が動くことを誰が知っていたのか、公園で話を持ち掛けた外国人は何者だったのかも気になる。悪いことをして海外へ逃げれば終わり、ではなかった。そのこと自体は、かなり気分のいいニュースである。そして未解決事件好きとしては、むしろここから先が気になる。
