ユーノスコスモは280PS、初期FDは255PS!? RX-7の3世代を数字で解剖【第4部】

ユーノスコスモは280PS、初期FDは255PS!? RX-7の3世代を数字で解剖【第4部】

1990年、マツダはユーノスコスモに3ローターの20Bを搭載し、280PSを達成した。前回までに追ってきた、ロータリー高級GT路線の頂点である。

では、その翌1991年12月に登場した3代目RX-7、FD3Sは何馬力だったのか。答えは255PS。コスモより25PSも低かった。

マツダは280PSを出せる技術を持ちながら、なぜ本命スポーツカーのRX-7を255PSで発売したのか。

もっとも、コスモの20Bは3ローター、FDの13B-REWは2ローター。同じエンジンの出力を25PS抑えたわけではない。

SA22C、FC3S、FD3Sの3世代を、エンジンだけでなく車重、足回り、価格まで調べ直すと、マツダが追い求めたものが見えてくる。

1978〜1991年、3世代のRX-7を発売初期の代表グレードで比較する

まずは国内発売当初の代表的な5速MT・4人乗り仕様を並べてみよう。SAとFCはGT、FDはタイプRを選んだ。グレードの装備水準は同一ではないが、車体と動力性能の変化を見るための比較である。

項目 SA22C FC3S FD3S
発売 1978年3月 1985年10月 1991年12月
比較グレード GT GT タイプR
エンジン 12A・NA 13B・ターボ 13B-REW・シーケンシャルツインターボ
最高出力 130PS(グロス) 185PS(ネット) 255PS(ネット)
車両重量 1,005kg 1,210kg 1,260kg
リアサスペンション 4リンク・リジッド 独立式セミトレーリングアーム ダブルウィッシュボーン
当時の新車価格 144万円 197.1万円 385万円

※国内仕様の発売初期モデル。SAの価格は1978年の東京地区価格、FCはカーセンサー掲載の税抜価格、FDは当時のカタログ掲載価格。異なる年代・グレードの名目価格であり、税の扱いや物価、装備差を統一・補正した比較ではない。


初代SA22C、2代目FC3S、3代目FD3Sの外観とプロポーションを比較するイラスト
歴代RX-7の外観を比較したAIイラスト。車両の特徴を示したもので、同一縮尺や年式別の細部を厳密に再現したものではありません。

初代SAの130PSと、FCの185PSを単純比較してはいけない

1978年のSA22Cは、12A型ロータリーを搭載した軽量スポーツカーだった。リトラクタブルヘッドライトと低いボンネット、空気抵抗係数Cd=0.36の流線形ボディ。車重1,005kgという数字は、いま見ても魅力的だ。

ただし、130PSという数字には注意が必要だ。マツダの公式開発史でも、SAの出力はグロス表示と明記されている。

一方、1985年のFCはネット表示で185PS。130PSから185PSへ55PS増えた、と計算すること自体はできても、測定条件の違う数字から実際の性能向上率を出すことはできない。

SAは1983年に165PS(グロス)のターボ車も追加した。ロータリーの出力向上は一足飛びではなく、何度も改良を積み重ねてきたのである。

FCは重くなった。その代わり、足回りを大きく変えた

1985年のFC3Sは、初代から性格を変えた。13B型インタークーラー付きターボを搭載し、車体は厚みを増した。比較したGTでは、SAより205kgも重い。

しかし、その重量増だけを見てFCを鈍重と決めつけるのは早い。初代のリアがリジッドアクスルだったのに対し、FCは独立懸架を採用した。

さらに、サスペンションへの荷重によって後輪の向きをわずかに変化させる「トー・コントロール・ハブ」を導入。これは電子制御で後輪を操舵する方式ではなく、足回りの構造を利用した仕組みだった。

FCが手に入れようとしたのは、直線の速さだけでなく、コーナーでドライバーが感じる操縦性だった。


SA22Cの4リンク・リジッド、FC3Sの独立式セミトレーリングアーム、FD3Sのダブルウィッシュボーンを比較するCG
RX-7のリアサスペンション進化を示すイメージCG。SA22Cは4リンク・リジッド+ワットリンク、FC3Sは独立式セミトレーリングアーム+トー・コントロール・ハブ、FD3Sはダブルウィッシュボーンを採用。部品の形状・配置は実車と異なる箇所があり、正確な構造図ではありません。

FDは50kgしか増えていない。それで70PSも強力になった

ここからが今回の数字の核心である。

1985年のFC・GTは1,210kg/185PS。1991年のFD・タイプRは1,260kg/255PS。両車ともネット表示なので、同じ出力基準で比較できる。

サイトBで再計算すると、車重の増加は50kg、約4.1%。ところが最高出力は70PS、約37.8%増だった。

パワーウェイトレシオも計算してみよう。

  • FC・GT:1,210÷185=約6.54kg/PS
  • FD・タイプR:1,260÷255=約4.94kg/PS

つまり、1PSが受け持つ車重は、FCからFDで約24.5%も減少した。 もちろん、これだけで加速タイムや旋回性能が24.5%改善したという意味ではない。

ただし、FDが絶対的に軽かったわけでもない。SAのGTより255kg重く、比較したFCのGTよりも50kg重い。マツダが「ゼロ作戦」と呼んだ軽量化は、初代の重量に戻すことではなく、新しい性能目標に対して不要な重量を削る試みだった。

アルミ製サスペンションアーム、軽量化した車体構造、低い重心。FDは単に大馬力を積むのではなく、その力を使うための車体を作り込んだのである。


夕暮れの展望道路に停まる赤いマツダRX-7 FD3Sのイメージイラスト
3代目RX-7・FD3Sのワイド&ローなスタイルを表現したAIイラスト。年式・グレード固有の外装部品を厳密に再現したものではありません。

FDの「50PS向上」と「70PS向上」、なぜ両方の数字がある?

マツダ公式資料には、FDの255PSを先代より50PS向上とする説明がある。ところが今回の比較表では70PS増だ。

これは誤記ではない。1985年発売時のFCは185PSだったが、1989年の改良で205PSになっていた。

すなわち、FC発売当初の185PSと比べれば70PS増。最終期の通常モデル205PSと比べれば50PS増。比較する年式が違うだけなのである。

こうした小さな数字の違いこそ、年式の多い旧車を調べる面白さでもある。

280PSになったのは1999年。しかも全車ではなかった

FDは1991年の255PSで完成したわけではない。1996年には5速MT車を中心に265PSへ向上。そして1999年1月21日発売の改良型で、タイプRSとタイプRが280PSに到達した。

ただし、同時期でもタイプRBの5速MTは265PS、4速ATは255PSだった。「FD=280PS」は後期高性能グレードの説明としては正しいが、全FD共通の仕様ではない。

1991年の時点で280PSを持っていたユーノスコスモと比べると、RX-7が何を優先して開発されたかが分かる。280PSという数字そのものは、マツダにとって未知の領域ではなかった。

だからこそ、FDでは出力と車重の釣り合い、操縦性、車体の反応を優先したと読み取れる。ただし、255PSに決めた理由を出力以外のどの制約が左右したか、その配分までは公開資料だけでは断定できない。


RX-7の出力推移。1985年185PS、1989年205PS、1991年255PS、1996年265PS、1999年280PS
RX-7の出力進化を示すイメージ図。1985年FC・185PSから1999年FD・280PSまでを比較。1996年265PSはMT車、1999年280PSはタイプR・RSの値です。背景車両は歴代RX-7をイメージしたCG。棒の高さは演出的表現で、縦軸の目盛りとの正確な比例関係を示していません。

144万円から385万円へ。RX-7は何を高級化したのか

比較表の価格も興味深い。SA・GTの144万円から、FC・GTの197.1万円、FD・タイプRの385万円へ。最初と最後では、名目価格が約2.67倍になった。

ただし、装備水準も年代も違うため、これだけで「FDはSAの2.67倍高価な車だった」と購入負担まで断定することはできない。

むしろ注目したいのは、高価格化してもRX-7が大排気量の高級GT路線へ移らなかったことだ。1990年のユーノスコスモが3ローターで豪華さと大出力を追求した一方、FDは2ローターを選び、運動性能へ資金と技術を集中させた。

2002年4月には最後の限定車「スピリットR」が発売され、同年8月に生産を終了。1978年から24年余り、RX-7は3世代を通じてロータリー専用スポーツカーという立場を守り抜いた。


初代SA22C、2代目FC3S、3代目FD3SのRX-7が夕暮れの山道を走るイラスト
3世代のRX-7を描いたAIイラスト。実際の走行場面や特定年式の純正仕様を再現したものではありません。

【編集者が思うこと】

FDといえば280PS。そんなイメージが強かったのだが、調べてみれば最初は255PSだった。しかも、その前年にはコスモが280PSを出していたのだから面白い。

もう一つ引っかかったのは重量だ。FDは「ゼロ作戦」で軽くしたというのに、発売当初のFC・GTより重い。ここだけ拾えば、なんだ、軽くなっていないじゃないか、と言いたくなる。

しかし、70PSも強くなったエンジンと、その力を使うための足回りを考えれば、話は違ってくる。

SAの軽快さ、FCの操縦性、FDの徹底した作り込み。個人的には、RX-7が伝説になった理由は最高出力の数字よりも、3代続けて「どう走らせるか」を捨てなかったことにあると思う。

それにしても、130PSと185PSの比較に測定方式の落とし穴まであるとは。昔のカタログは、やっぱり隅々まで読まないと危ない。

ちょっと分かりにくい用語

グロス表示/ネット表示
エンジン出力の測定条件の違い。グロスは補機などの負荷を抑えた条件、ネットは実車搭載に近い補機類を装着した条件で測定する。ネット値は駆動輪で測った馬力という意味ではない。
パワーウェイトレシオ
車両重量を最高出力で割った値。kg/PSの場合、小さいほど1PSが受け持つ重量が少ない。ただし、車の加速や旋回性能を単独で決定する数値ではない。

マツダロータリー 7部作

1967年のコスモスポーツからコスモAP、ユーノスコスモ、RX-7、RX-8、そしてロータリーの復活まで。マツダが挑んだ夢と現実を、開発史、性能比較、販売実績、当時の記録、独自計算から全7部で検証します。

参考資料

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