2004年、2ちゃんねるに突如現れた「きさらぎ駅」。
いつもの電車に乗っていた女性が、存在しない駅へ到着し、線路を歩き、「伊佐貫トンネル」を抜け、謎の男の車に乗ったところで消息を絶つ。
今なお「本当に異世界へ行ったのではないか」と語られるが、冷静に見れば、これは非常によく出来たネット怪談である。
まず決定的なのが時間だ。
投稿者は23時14分にはすでに電車の異変を実況している。しかし後の投稿では「23時40分ごろの電車に乗った」と語っている。これでは、乗車する26分前から車内実況をしていたことになる。

さらに「新浜松から乗った」と明かしているが、遠州鉄道にはそもそも鉄道トンネルがない。それなのに途中で「普段はないトンネルを通った」と投稿する。
そして存在しない「きさらぎ駅」。
線路を歩けば太鼓と鈴の音。片足の老人が現れて消える。さらに「伊佐貫トンネル」。最後には親切そうな男が現れ、車に乗せられ、山奥へ向かっていく。

出来すぎている。
後年には「さぎの宮駅がモデル」「廃線となった光明電気鉄道の匂坂駅へタイムスリップした」「伊佐貫トンネルにも元ネタがある」など、無数の考察が生まれた。
しかし、これらはすべて原文が有名になった後から付け加えられた推理である。
現実の失踪事件として報道されたわけでもない。
「はすみ」という人物の実在すら確認されていない。
警察の捜索記録も、本人の身元も、乗車記録も存在しない。

残っているのは、匿名掲示板に書き込まれた文章だけだ。
では、なぜ20年以上も語り継がれたのか。
それはこの話が、「怪談」として非常に優秀だったからだ。
投稿者だけで物語を進めず、掲示板の住民が「駅員を探せ」「線路を歩け」「トンネルの名前を確認しろ」と助言し、その助言によって次の展開が生まれる。

読者自身が物語に参加している。
しかも2004年。
スマートフォンもGPS共有もない時代だ。
だからこそ、
「もしかしたら、本当なのでは?」
という隙間が残った。
きさらぎ駅は異世界に存在する駅ではない。
インターネットそのものが作り出した、存在しない駅なのである。
【管理者が思うこと】
最近の流行語ふうで、雑に感じてみた。楽しいだけでは、ダメですか? 作り話でも、ここまで謎だらけなら十分楽しめる。