ウルトラマンシリーズをかなり見ている人でも、突然名前を出されると「ナイスって何だっけ?」となる。
ウルトラマンナイス。
1999年、『ウルトラマンティガ』再放送枠のCMとして展開された、1話約1分・全20話の異色作である。
普通のテレビシリーズではない。目的は玩具のPR。

ところが円谷プロは、ただウルトラマンが出てきて商品を持ち上げるだけのCMにはしなかった。
主人公を作り、家族を作り、防衛チームを作り、敵宇宙人を作り、怪獣まで用意した。
主人公は、夢星家のお父さん・夢星銀河。

怪獣が現れると、腕時計型変身アイテム「ナイスドリーマー」に入ったチョコを食べ、ウルトラマンナイスへ変身する。
身長39メートル、体重3万9000トン。
「39=サンキュー」という、これでもかというほど陽気な設定である。
敵は地球征服を狙うザゴン星人。
送り込まれる怪獣も、食いしん坊怪獣モモザゴン、暴れん坊怪獣ブルブルザゴン、怒りん坊怪獣タブザゴンと、名前からして完全に子ども向け。
しかも20話あるのに、基本的にはこの少数怪獣を何度も使う。
普通のウルトラシリーズなら毎週新怪獣が出る。
ナイスは違う。
「またお前か!」
で話が進む。
だが、この作品を単なる低予算CM作品と思ってはいけない。
夢星家の祖父・祖母を演じているのが、なんと黒部進と桜井浩子なのである。

初代『ウルトラマン』で、ハヤタ隊員とフジ・アキコ隊員を演じた二人が、今度は“ウルトラマンに変身する男の家族”として並んでいる。
ここがウルトラファンにはたまらない。
1966年、科学特捜隊として怪獣と戦っていた二人が、33年後には一家のおじいちゃん、おばあちゃんとして再び同じ画面にいる。
しかも、その息子世代がウルトラマンに変身する。
派手に「初代ウルトラマン復活!」と宣伝するわけでもない。
たった1分のCMドラマの中に、さりげなくウルトラシリーズの歴史を忍ばせている。
これがナイスの妙な豪華さである。
制作規模は小さい。
怪獣も少ない。
放送時間も短い。
しかし、ウルトラマンの登場、変身、防衛チーム、怪獣、宇宙人、必殺光線、そして最終決戦まで存在する。
つまりナイスは、
「ウルトラマンを使ったCM」ではない。
「CMという制約の中に、ウルトラマンシリーズを丸ごと押し込んだ作品」なのである。
ティガ、ダイナ、ガイアという平成ウルトラ黄金期のすぐ横で、チョコを食べて変身するお父さんウルトラマンがいた。
そしてその家には、ハヤタとフジ隊員がいた。
こんな妙な作品、ウルトラシリーズ以外ではまず生まれない。
地味で、短くて、怪獣も使い回し。
それでも知れば知るほど、
「これ、ちゃんとウルトラマンじゃねえか」
と思えてくる。

ウルトラマンナイス。
名前は軽い。
設定もふざけている。
だがウルトラシリーズへの愛だけは、意外なほど本気である。
【管理者が思うこと】
CMが番組だったというのが異色すぎる。ナイスというふざけた名前で、本当にシリーズに加わることまで考えていたのかどうか。まあ、ご愛嬌で仲間入りしたウルトラ兄弟ってところだね。