『相棒』は亀山薫で終わるはずだった!?――神戸尊再登板で読み直す水谷豊の「最後」発言

『相棒』は亀山薫で終わるはずだった!?――神戸尊再登板で読み直す水谷豊の「最後」発言

『相棒』は、初代・亀山薫で始まり、亀山薫で終わる。そんな話を聞いたことがある。

実際、水谷豊は2022年、作品の「終わり」を意識したとき、亀山を戻したいと思っていたと語っている。そして同年、寺脇康文が14年ぶりに復帰した。

ところが2026年10月13日、テレビ朝日は『相棒 season25』の途中で、亀山から神戸尊へ再び交代すると正式発表した。

2000年の放送開始から26年。水谷は74歳。そろそろ最終章かと思っていたら、まさかの2代目再登板である。

「初代で始まり、初代で終わる」という話は、いったい何だったのか。水谷の考えが変わったのか、それとも最初から最終回の約束などなかったのか。

2022~2023年の本人インタビュー、歴代視聴率、2026年の公式発表を照合してみた。

水谷豊は本当に「亀山で終わらせる」と言ったのか

まず2022年10月12日、MANTANWEBが掲載した水谷豊と寺脇康文のインタビューを読み直した。

水谷は、作品が終わりに向かうと感じたときには、亀山を再登場させたいというイメージを以前から持っていたと説明している。しかし『相棒』は予想以上に長く続き、実現まで14年かかったというのだ。

ここまでは確かに、「最後は初代相棒と」という構想を連想させる。

ところが、続く質問が重要だった。

聞き手が、では『相棒』はもうすぐ終わるのかと尋ねると、水谷は「僕にも終わりが見えません(笑い)」と答えている。

つまり、亀山の再登場を作品の終わりと結びつけて考えた時期はあった。しかし、2022年時点で最終回の時期を決めていたわけではない。

2023年2月の放送400回記念インタビューでも、水谷は終わりを意識すると亀山に帰ってきてほしいと思っていたと振り返っている。

「終わりを意識したら亀山を戻したい」と「亀山が戻ったら必ず終わる」は、似ているようでまったく違う。

今回調べた本人発言と公式資料からは、「亀山との再結成を最終回にする」と決定していた記録は確認できなかった。


2022年の亀山薫復帰を象徴する、杉下右京と亀山薫が夕暮れの廊下に並ぶAI生成イラスト
2022年の亀山薫復帰を象徴したAI生成イラスト。実際の『相棒 season21』の放送場面や撮影場所を再現したものではない。

2023年の証言では、亀山はオレンジ、神戸はブルー

もう一つ、2023年3月8日のテレビ朝日系メディア「テレ朝POST」に、面白いインタビューが残っている。

水谷は歴代相棒を色で表現し、亀山をオレンジ、神戸をブルー系と評していた。

亀山は人情と行動力の男。対する神戸は警察庁出身のエリートで、右京と同じく理屈で物事を考える。ただし、水谷は、神戸について単に冷たい人物だとは見ていなかった。

さらに、右京と神戸というエリート同士の組み合わせに疑問を持つ声があったことにも触れ、似た者同士に見えて実は大きく違うところが面白い、という考えを示していた。

つまり水谷にとって、亀山だけが唯一の正解だったわけではない。

亀山と組めば右京の冷静さと人情の対比が際立つ。神戸と組めば、知性や正義の判断をめぐる対立が生まれる。

同じ杉下右京でも、相棒を替えれば別の顔を描ける。 この構造は、2026年に神戸を戻す判断を考えるうえで無視できない。

視聴率はどう変わった? 復帰初回から6.9ポイント低下

もちろん、現実のテレビ番組には視聴率という問題もある。

神戸尊時代のseason9は、2011年のORICON NEWSによれば、元日スペシャルを含む全シーズン平均世帯視聴率が20.3%。当時のシリーズ最高だった。

その後、2022年に亀山が復帰したseason21は、初回17.3%という高い数字でスタートした。

しかし2025年のseason24初回は10.4%。いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区の世帯視聴率である。

放送 初回世帯視聴率
season21(2022年) 17.3%
season24(2025年) 10.4%
差 6.9ポイント低下

独自に計算すると、6.9÷17.3×100=約39.9%。season24の初回世帯視聴率は、亀山復帰時の初回と比べて約4割低い水準だった。

ただし、これは両シーズンの初回同士を比較した数字だ。2022年には14年ぶりの復帰という特別な話題性があり、通常回の人気差をそのまま表すわけではない。

また、リアルタイムの世帯視聴率だけでは録画や配信による視聴を評価できない。視聴率の低下から、番組終了や相棒交代の原因を直接断定することもできない。

それでも、かつて20%を超えた人気作が、異なるテレビ視聴環境の中でどんな新展開を模索するのか。その背景を考える一つの材料にはなる。

2026年の発表に「最終章」という言葉はあったのか

そこで2026年10月13日のテレビ朝日公式発表に戻ってみる。

season25では、亀山から神戸へのバトンタッチがシーズン途中に行われるという。時期も、亀山の退場理由も、神戸の復帰理由も、発表時点では明らかにされていない。

水谷は今回の交代を、長い歴史を持つ『相棒』だから実現できる試みと位置づけ、相棒ワールドが新たな歴史を刻み始めると期待を語っている。

少なくとも公式発表は、シリーズ終了や杉下右京の引退を告げるものではなかった。

ここで一つ、制作上の特徴が見えてくる。

亀山は2008年に警察を辞めてサルウィンへ渡り、2022年に復帰した。一方、神戸は2012年に警察庁へ戻ったあとも、右京との関係を保ち、たびたび事件に協力している。

つまり神戸は、かつての相棒であると同時に、警察組織の内側を知る現役の人物として再登場できる。

これは編集者としての推測だが、亀山の復帰が「原点への回帰」だったなら、神戸の復帰は「過去の人間関係を使った新しい展開」と考えられる。

すでに知り合っている二人だからこそ、新人相棒との信頼関係づくりを最初から描かず、正義や組織をめぐる問題へ踏み込める余地がある。


2026年の神戸尊再登板を象徴する、神戸尊が書類を持って事務室の扉を開くAI生成イラスト
2026年の神戸尊再登板をイメージしたAI生成イラスト。実際の『相棒 season25』の未放送場面や特命係のセットを再現したものではない。

74歳の水谷豊にとって、『相棒』はまだ続くのか

水谷豊は1952年7月14日生まれ。2026年10月現在74歳である。

2026年8月のseason25公式インタビューでは、シリーズが465話に達したことを振り返りながら、長く続いても古びない理由を、常にその時代の「今」を描いてきたからだと説明していた。

また、右京の警察官としての正義は変わらない一方、人間としての内面をさらに深く描く日が来るかもしれないとも話している。

年齢を考えれば、最終回がいつか来ることは当然だ。しかし、水谷本人が引退時期を発表したわけではない。

「亀山で終わる構想が変更された」と断定するより、「終わりを意識して戻した亀山と、さらに4年間物語を続けた結果、次の相棒へ進むことになった」と見るほうが、公表記録には合っている。

2026年10月21日開幕のseason25で、右京が神戸をどう迎えるのか。亀山がどんな形で去るのか。そして、この交代がシリーズの最終章へつながるのか。

答えはまだ放送されていない。

ただ、初代で始まったドラマが、初代の帰還を経て、再び2代目へバトンを渡す。26年も続けた作品だからこそできる、妙に贅沢な展開ではないか。

【編集者が思うこと】

俺は亀山が2022年に戻ってきたとき、これは『相棒』の最終章が始まったのだと思っていた。

そりゃそうだろう。初代が14年ぶりに戻るんだから、最後は右京と亀山で締める。長寿ドラマとして、これ以上きれいな終わり方はない。

ところが水谷本人の昔のインタビューを読み直すと、終わりを意識して亀山を戻したかったとは言っているが、最終回の日付を決めたとは言っていない。

さらに4年続けて、今度は神戸尊だという。なんだよ、まだ続くのか。しかも、ちょっと面白そうじゃないか。

視聴率だけ見れば、昔の20%時代とは違う。でも、年齢や数字だけで終わりを決めるなら、こんな変わった交代劇をわざわざ仕掛ける必要もない気がする。

俺が妙に気になるのは、杉下右京という男が、相棒を何度も失って、何度も迎え入れて、それでも警察官としての正義だけは変えないことだ。

普通のドラマなら、主人公の引退こそ最大の見せ場になる。でも『相棒』は、まだその前に描けることがあると言っているようにも見える。

結局、最終回が近いのかどうかは分からない。ただ一つ思うのは、これだけ長く続いたドラマの終わりを、視聴者の予想どおりにしてくれるとは限らないということだ。

相棒 4部作

亀山薫から神戸尊へ、17年前の交代劇が再び。2008年の亀山卒業、神戸尊の降板をめぐる噂、そして2026年の再交代が意味するものを、当時の資料と本人の発言から全4回で検証します。

参考資料

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